Closer
- 疑惑の恋人 -

20061103

1.


  以前、私はある男と酒の席で血腥い話を繰り広げながら「性悪説」と「性善説」について論じたことがある。
  話の流れとしては確か「死刑」反対か否か。
  そんな話の流れだったかに思う。
  私としては曖昧な意見しか返すことが出来ず、死刑反対制度の中、もしも身内が、恋人が被害者だったならば間違いなく死刑を望む。と答えた。
  文筆家の端くれとして甚だ恥ずかしい話ではあるが、後日、非常に興味深い話を男が教壇上で「悪は血で決まる」と言うような題材を取り上げたのだ。私は事細かにメモしたものだ。
  外国の研究者の一説で悪には「家系」があるというのだ。
  かなり暴力的な論(はなし)であるが、正直面白いと思ったのだ。悪人であることが血筋で決め付けられるのだという。
  その話を彼の口から聞いたときには「血で悪か否か」が決まれば、科学の発達した未来には悪の遺伝子なるものが存在し、遺伝子治療を行い悪の遺伝子は消えるのではないかというようなSF的な考えを、安いピンク色の自分の脳に張り巡らしたものだ。
  実際には面白いでは済まされない題材でもあった。
  だが、私は「性善説」を信じ唱えている。
  私が想像で描く殺人模様の中でも犯人には殺人に対する動機と理由を明確にさせている。登場させる殺人犯はシリアルキラーに見せても、殺人にいたる理由定義づけさせている。
  物事の良し悪しを解しない幼い子供が悪に転ぶか否かは、環境によって決まると思っている。もちろん本人の持って生まれた性質もあるであろうが、生まれ持っての悪人はいないと信じている。
  殺人犯の脳を調査するとある一部が欠損もしくは損なわれていることが原因でたやすく沸点に達しやすく理性を失いやすいと言うことが解剖学で分かっていると言うことを耳にしたことがある。
  だが、殺人者のすべてが当てはまることではない。
  致し方なく人をあやめてしまう場合もある。
  自分の身を守るためである。
  それらは殺人を犯していても犯罪にはされない場合がある。しかし、快楽殺人の犯人もまた常人のそれとは違う脳構造なのではと思う。
  性欲と殺人欲が結びつく。人を殺したい衝動。殺人を犯すときに起こる快感。
  ある種のフェティシズムと、パラノイアだろう。
  そういう人間を調査の対象としたのが行動科学、犯罪心理学で、FBIが提唱し始めた「プロファイリング」と呼ばれる代物である。
  犯行パターン
  犯人の人種的分類
  取り巻く環境
  学歴
  職歴
  嗜好
  さまざまな見地からデータベースとしてまとめられているようであるが、やはり、生きている人間はそれぞれに個性があるように、殺人者および犯罪者も其々ではではないだろうか。
  単なる統計としてのデータベースとしてしか役に立たないのではないだろうか。

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