parfum de l'autre personne
9
夜の7:30。
俺の帰宅は7:00ごろ。
会社を定時で上がり、買い物を済ませて帰宅。
残業を良しとしない外資系で助かったとつくづく思う。
「ただいま」
あれから一緒に住むことになって、半ば強引にこいつの部屋に荷物を運び込む手はずを整えられ、あれよあれよという間に引越しさせられてしまった。
4LDKの超豪華マンション。
結局俺の意見はことごとく却下されてしまった。
同棲というよりもどちらかといえば、「間借り」になっている。
下宿かな。
家賃は俺の給料一つ気分ぐらいはいくんじゃないかと思うが、全額を教えてはくれない。
一応部屋代を収めているが、多分、4分の1にも満たないんじゃないかなと思う。20畳ほどの応接間にダイニング対面式キッチン。
こいつの書斎に俺の書斎兼寝室、そしてキングサイズのベッドが鎮座ましている主寝室。
朝早く部屋を出る俺はこいつよりも早く帰っていないと散々な目にあうことになった。なので、出迎えるの俺の役目。
「おかえり」
最初の頃は玄関間で迎えに来てキスをしろとせがんでいたが、最近はリビングでテレビをみて、顔を合わすだけでよくなった。
飯のしたくもするときはするけど、俺のほうが不器用なので、余り作らない。
こいつが朝、部屋を出るときに下ごしらえをしていてくれて、俺は帰宅したら米を洗ってご飯を炊くだけ。
「浮気をしない」って約束したにもかかわらず、相変わらずこの男は以前となんら変わらない。
平気で女の匂いをさせて帰ってくる。
だけど、口直しとか言いつつ俺を抱きしめてキスをするけど、以前のようにわざとらしいまでの女の官能的な匂いは漂っていない。
官能的なヴァニラ、イランイラン、チュベローズの匂いは無くなった。
わざとらしいサボンの香りもしなくなった。
今のこの男に残っているのはホワイトムスクと微かなミュゲとブルガリアンローズの甘い香り。
前者はこの男が使っているフゼア系トワレのラストノートで、ミュゲはたぶん秘書嬢が使用しているディオリッシモの香り。
ブルガリアンローズは会社の役員用トイレのハンドソープのもの。
今のところ仕事以外での女性との接触を避けているようで、余分な匂いはしない。
嗅覚が元に戻った俺はキス一つで昼ごはんを当てることが出来る。
「あ、お前、昼飯にニンニク食っただろう」
くせえよ。
「旨いスパゲッティを食ったんだよ」
すぱげっち・・・ですか。
ジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイをするりとはずす。こいつが歩いた後には脱皮のごとく服が落とされていく。それを拾うのは俺の役目らしい。
「女とか?」
女好きは死ぬまで治らない病気らしいからお決まりの質問をしてみた。
「取引先の人とだよ。女と一緒の時ににんにく料理なんて食えるかよ」
冷蔵庫を開け、ビールを取り出し手プルトップを引き、一気に流し込む。
のど仏が上下する。
「あん?」
泡のついた口をぬぐい、「女性は昼真っからニンニクなんて食わないものなの」といってから残りのビールを一気にあおった。
「ああそう」
でも俺の会社じゃランチに出るぞ、にんにくどっさりのトマトソースのペンネアラビアータとか、麻婆豆腐にタイカレーとか。そういってやりたいけど、何もムキなって奴のいうことに波風立てる必要はないかと思って、ごにょごにょ呟くだけにした。
「今度行こうな、そのスパゲッティ屋」
相当旨かったらしい。俺を誘うのはそういうことだ。
「いーやーだー、俺はイタリアンレストランがいい」
誘ってくれる野はうれしいけど、素直に頷けないので、ちょっとした我侭を言う。
「いや、だから『スパゲティ屋』」
この男の中ではイタリアンレストランのことを「すぱげっち屋」となっているのは明確である。
会社の接待、パワーランチで人がどかどかと入っていくような店には余り行くことは無いだろうし、ホシがセッティングするのであれば、それなりのレストランであるはずである。
「ちゃんとした『イタリアン』が食いたい」
「一緒じゃないか!」
「お前のはスパゲッティだろ!ボンボンの癖して!俺が食いたいのは『パスタ』なんッ」
「イタリアンレストランにはナポリタンねえじゃん」
「あれは、イタリアンじゃないの!」
「……」
「知らんかったんか?」
こくこく。
「ほな、今度、俺のお勧めイタリアンレストランに旨いパスタ食いに行こうな?」
「ああ」
「お前の奢りで」
Artemisia Absinthiumのオーナーが経営するイタリアンの店で散々おごらせたる。
高いワイン仕入れといてもらうねん。
あ、ドンペリのロゼな。
あれ入れたんねん。
ちゃんちゃん♪
とりあえず おわり。
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お付き合いありがとうございました。
関西弁(神戸弁)の主人公…
ああ、パロディをひたすら引き摺っています。
いうなれば管理人が標準語を話せない所為でもある。
そーいや最後まで攻様の名前が出てきてません。
名前を呼ばなかったのは瓜生クンの意地。
名前を呼ばせなかったのはアテクシの意地です。はい。
にしても中身の無い話よのう。